ラルフ・タウンゼントについて


ラルフ・タウンゼントの著作『暗黒大陸中国の真実』についての書評(→詳しくはこちらを参照)をご覧いただいた清水様より、タウンゼントが有罪判決を受けた当時の米国司法について貴重なご指摘をいただきました。以下にご報告申し上げます。

タウンゼント逮捕の根拠は、1938年に立法化された「Foreign Agents Registration Act (FARA:外国エージェント登録法)」でした。この法は、敵国と関係のある個人・法人と接触のある人物(新聞発行人を除く)が、当該国に関する有利な発言や行為を公に行う場合には、予め当該敵国の「エージェント」として届け出ていなくてはならず、未登録の場合は諜報活動と見なされて処罰されるというものです。発言や行為の内容を制限するものではありませんが、届け出が必要な要件が広義・曖昧に過ぎ、六ヶ月毎の届け出など手続きも煩雑、罰則も禁固刑が課されるなど、実質的には思想弾圧法としての運用がなされていたものと思われます。この法は現在も連邦法として有効です。詳しくは米司法省の解説ページをご覧ください(http://www.usdoj.gov/criminal/fara/)。

タウンゼント逮捕を報じる「New York Times」の誌面。(出典:「New York Times」1942年1月29日付,15頁 )

タウンゼント逮捕を報じる「New York Times」の誌面。(出典:「New York Times」1942年1月29日付,15頁 )

タウンゼントが「日本の未登録エージェント」としてFARAに抵触するとして逮捕されたのは1942年1月でした。具体的な罪状については不明ですが、当時、タウンゼントは日系人の間で親日派評論家として名声があり、時期的には、日系人収容(1942年2月19日開始)があったことからも、さしずめ収容に反対するような記事をエージェントとして未登録のまま書き、それが直接の引き金になったものと思われます。同年3月、タウンゼントは有罪を認め、8~24カ月の不定期禁固刑という厳しい判決を受けています。

タウンゼント事件は、清水様が指摘するように、「日系人が問答無用で強制収容されるような異常な空気の中で起きた超例外的事例」というのが真相と思われます。その点で書評の「親日的言辞だけで逮捕・有罪判決・投獄されることは米国ではあり得ない」という表現は誤りと考えます。ここに訂正いたします。なお、本の内容につきましては、”世間話”に限って価値が見いだせる程度である、との筆者の感想はかわりありません。

最後に、タウンゼントは領事官の前歴と評論家としてもある程度の名声があったことからも、起訴に際して多少の圧力はあったと思われ、その点で中国(国民党)のロビー活動が気になるところです。機会があれば、タウンゼントが当時書いたパンフレットの内容や出所後の回想、国民党の関与などについても調べてみたいと思います。

初出:http://shanxi.nekoyamada.com/archives/000365.html

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8 thoughts on “ラルフ・タウンゼントについて

  1. たけ

    どうもはじめまして。
    ラルフ・タウンゼントの著作、興味もっていたので
    買ってみようかと思っていたのですがyamaさんの書評をみるといまひとつ信頼は出来ないようですね・・・
    あと同じような反中論調の著者として
    現在は黄文雄氏などがおられますが
    やはりyamaさんの評価は×でしょうか?

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  2. yama

    たけさま
    タウンゼントの本ですが、政治に対する見方は全くアテになりませんけれども、当時の(内乱と無能な治世で)疲弊した大陸の情景を描き出しているという世間話の点では少しは価値があるかもしれません。ただ、かなり大袈裟ですから、話半分に読むなら、別のもっとマシな紀行記を読んだ方が良いということになります。
    黄文雄氏の著作は「日中戦争の真実」云々といったもの一冊だけしか目を通していませんので、氏の史観については良く分かりませんが、私にとっては新しい知見がありませんでした。例えば黄河決壊や長沙放火といった蒋介石の不法は、すでに児島襄氏の『日中戦争』でも描かれていたことです。ようするに、今までに星の数ほど出ている日中戦争の本から、嫌中に訴えかける部分を抽出して氏の史観に沿った叙述としてまとめたという印象です。歴史の本ではなく、思想の本ですから、私にとっては必要のない本ということになります。ご参考になれば幸いです。

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  3. たけ

    ご丁寧な御返事ありがとうございます。
    個人的に日華事変や満州事変関連の本で
    世間で溢れているものは立場思想によって大きく変わっているうえ
    中国側の強烈な被害者史観というかそういったものに対する反発からか
    私などの専門外の者はつい思想的に日本の立場を弁明したものに偏ってしまいます。
    最近は『中華帝国の興亡』と言う著書を購入しましたが
    中国史に関してはすごくよく調べているなあという印象です。
    例によって偏っていますが。

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  4. yama

    たけ様
    思想本でも歴史本でも重大な嘘が書いてない限りはOK、それぞれの史観という意味で尊重されるべきで、あとは好みの問題、としか言いようがない気がします。自国を擁護する気持ちは人として健全ですし。
    そういえば自宅の書棚に一冊だけ翻訳ですが黄氏の本がありました。『食人宴席』です。文革の混乱を描いた原著からセンセーショナルな部分を中心に訳出した色モノ本で、著者の鄭義からクレームを受け絶版になった本です。おもしろいのは、同じテーマの本を中国文学者が邦訳しましたが、そちらは反対に(中国に気兼ねして)食人部分を収録しなかったんです。
    両者とも印象操作という点でフェアではありませんが、昔と違って今はいわゆるロングテールというやつで、そうした作為もネットですぐに流れます(元ネタは矢吹晋先生のサイト)。そういった点では、昔と違って「実事求是」が得やすい環境になりました。

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  5. yaegaki-hime

    >ラルフ・タウンゼントの著作、興味もっていたので
    買ってみようかと思っていたのですがyamaさんの書評をみるといまひとつ信頼は出来ないようですね・・・
    ↑こういう考え方はいかがなものかと思いますね
    目下原文の著書をアメリカの古本屋で買って読み始めているところです。この本を読むと70年前の中国ではなくて今のことかと思えるほど普遍の中国気質を感じるので やはり名著だと思います。逆にこちらのブログ主のご意見がさまざまなところで偏重しているように感じて 一体どなたなのかと気になるくらいです 自分の力で手を尽くして真実を知りましょう。

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  6. yama

    yaegaki-hime 殿
    「偏重している」とは何を差して言っているのでしょうか?私は事実を元に論じていますので、それを偏重と批判するのであれば、具体的にどの稿のどの典拠資料が偏っているとか、史料解釈に予断があるということを明らかにした上で批判してください。それでなければ単なる印象操作に過ぎず、説得力はありません。このラルフタンゼントについても、最近では八路の七旦戦についても、私が知り得ない、また未見の史料を元に、貴重な批判をいただきました。そのような批判をお願いします。
    ラルフタウンゼントの本について言えば、中国批判の印象操作に利用したい輩が好んで珍重しますが、中身は薄っぺらな紀行文の類に過ぎません。昔の汚い中国と今も似ているからといって何の意味がありますか?死体なら長江で今もたまに浮かんでいますよ(誰も通報しない)。中国批判をしたければ、このホームページにあるように事実をもとに論じるので十分でしょう。

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  7. kk

     ラルフ・タウンゼントの本は今読み始めています。本のさわりですが、今のところウソはないと思います。
      長くなり誠に申し訳ありません。
     「偏見である、史実と異なる、いい加減だ」と批判されるかもしれませんが、「媚中派と日本侵略戦争派、南京大虐殺派」の視点に対する私の反論を書いてみました。申し訳ありませんが、よろしければ、矛盾点や反論等ご指摘お願いいたします。
     私は、左派でも右派の社会主義者でもありません。有る映画で「左翼は冷酷、右翼は残酷」と言うある大使のセリフが頭に残っていました。長年私の頭の中に残っていた疑問が確信に変わったのは残念ながら数年前です。渡辺昇一氏の仰る通り、左派であろうと右派であろうと社会主義者は「同じ穴のむじな」なだと言うことです。右派の代表が、ヒットラーやムッソリーニであり、左派の代表が、スターリン、毛沢東、金成日、ポルポト達で、何れも権力闘争と粛清、自国民大虐殺を行った、独裁帝国主義者達です。帝国主義と言うと、アメリカや過っての大日本帝国を連想される方々は多いようですが、中国やロシア、北朝鮮も帝国主義となんら変わりはない。ファシズムと言われた北一輝の著書を読むと、彼の主張が正しく共産主義の主張に酷似する事が分かります。悪魔の国北朝鮮に羨望しテロやハイジャックまで行った日本赤軍派は粛清とリンチ殺人まで行った極悪人グループです。元日教組の委員長は北朝鮮のポチョムキン村のトラップに填まり、死ぬまで北朝鮮を称賛しました。北朝鮮からどれだけ優遇されていたのでしょうか。社会党の元土井委員長は拉致事件まで否定しました。田原総一郎氏も北朝鮮でのカラオケの話を本に書かれていましたが、彼もそのトラップに填まったようです。リベラルとか人権・平和主義者と称する左派の社会主義者の本質は、本当の意味での平和主義者ではないのです。中国共産党は毛沢東の権力闘争である文化大革命での大虐殺、トウ正平・江沢民による天安門事件、胡錦濤によるチベットやウイグル等の自治区で虐殺や組織的レイプと奴隷制度とも言うべき民族浄化政策を行っている。過っては原爆実験まで行ったのである。中国共産党は、孔子や孟子を自らで殺し、全ての宗教を認めていない。なぜなら共産党そのものが毛沢東を教祖とした、粛清の宗教だからではないでしょうか。孫文は、「民衆は屑」だと言ったそうです。それを蒋介石も毛沢東も引き継言いだ。だから、要塞に自国兵を鎖で繋ぎ最後まで戦わせた。また督戦兵によって、退却する自国兵を機関銃で撃ち殺した。
     そう言った人命を軽視した中国だから、東京裁判以後、中国が南京事件を騒がなかったのは、「彼らにとって大きな問題ではなかった」のでしょう。それを煽り立てたのが、「日本共産党」の手引きで、中国を取材した本多勝一と朝日新聞である。彼らはポチョムキン村のトラップに填まり、誇張と捏造の多い中国共産党のお膳立てされた証人や資料をそのまま世界中に垂れ流し、中国に日本叩きの外交カードを与えてしまった。更に旧社会党委員長の田辺誠や総評が資金を出し、嘘の写真や資料まで記載した南京大虐殺記念館を建てさせ、中共と一緒に、反日活動を行って来た。その結果、「天安門事件」をもみ消すために利用され「日本仮想敵国化と愛国教育」が始まったのです。私は、中国で仕事した経験も有るので、多少は中国人の知り合いもおり、真っ当な中国人も多いのであるが、本当の意味での日中友好に対して、中国人の憎しみを煽った彼らの罪は大きい。
     また「レイプオブ南京」で「日本人が、人を切り刻み、妊婦の腹を裂き内臓と赤子を引きずり出した。人肉まで食べた。」とアイリ・スチャンは書いた。こんな捏造された猟奇的な虐殺まで日本兵が行ったと世界に吹聴されては、日本人若者や日本の名誉にとって大問題である。人肉を食べる文献は、中国に有っても日本には無い。
     そもそもドイツ、ロシア、北朝鮮、中国の様な民間人殺傷を目的とした強制収容所、ロシア革命や文化大革命による粛清、天安門事件、婦女子や赤ん坊を含めた民間人の殺戮を目的とした広島、長崎の原爆及び東京大空襲と比べる事自体が本質を摩り替えている。
    更に、この仲間は、その「歪んだ中国人愛国教育」や「日本人洗脳教育」を支持し、罪のない学生たちを修学旅行で大虐殺記念館に生かせ、「謝罪させようとする」日教組を支持している。彼らの論調や視点をよく考えて見ると、中国側に立って論じている事が分かって来る。それでも中国共産党が真面な政党ならば私も心配しませんが、真面ではないから心配しているのです。
     安全区へラ-べをはじめ外国人達は、国民党の兵士や高級将校まで国際法に違反して匿ったのである。大虐殺論者達は、日本兵の行為を「やたらとハーグの国際法違反。」と言いながら、国民党が中共に轢き込まれた民間人残忍事件(第一次南京事件、通州事件、済南事件、成都事件、北海事件等)及び盧溝橋事件、第一次上海事変、ドイツと中共スパイと一緒に行った第二次上海事変等の挑発や便衣兵による騙まし討ち、捕虜の惨殺、上海無差別爆撃、安全区での中国兵保護等 中国が先に行った数々の国際法違反には擁護はしても非難はしない。彼らは残虐写真の誤用や誇張、捏造まで擁護する有様である。
     「大虐殺派、侵略戦争派」は、例えば現在の視点で満州帝国を傀儡政権だったと非難する。しかし、満州は中国ではなく、満州族の土地である。これも列記とした事実である。そのままにして置くべきだったと現在の視点で仰る方々がいる。そう単純に出来ない時代であったから、葛藤や失敗も繰り返したのである。また、日本の統治は、欧米の統治とは一緒には出来ない事も確かである。

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  8. yama

    kkさま
    ご主張に依存はございません。中国のやり口に、日本は生真面目に対応することが悲劇を生む要因と思います。その点では、単純に日本が異文化コミュニケーション下手、ということになります。
    中国側に立って論じる人々についてですが、エージェントは別として、言い当て妙がウィストン・チャーチルの言葉“If you are not a liberal at 20, you have no heart. If you are not a conservative at 40, you have no brain.”でしょうか。かつて私もこれでした。学者の中には中国賛美が若気の至りであっても、それが現在の地位、生活の基盤になってしまってると、そう簡単に方向転換(思想転向)できません(飯が食えなくなる)。ウソをつき続けなくてはいけないので、普通はつらく、耐えられませんが、飯が食えないのはつらいですよね。かつては金持ちでなければ歴史学者になるなと言われましたが、学究的良心に従うという点でも真理かと思います。
    タウンゼントの本ですが、相当に偏見がありますので“話半分”でしょう。あの本をありがたがってちやほやすることに、私は形容しがたい恥ずかしさを感じます。

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