書評:中国、この困った隣人―日本人ビジネスマンへの警告


著者である別宮氏には、本書の他にも日露戦争を題材にしたものがある。この本を読んだ人は思うだろうが、あの”通説”が実は正しくなかったとすると、では何を基準に本を選べば良いのだろうと分からなくなってしまうだろう。いろいろな本をたくさん読む手はあるが、時間もないし、最も真実に近いものを選びたいとは誰しも思うだろう。そんなとき、他では見かけない自分が体験したことと同じことが正確に書いてあったなら、その本と著者への信頼性は一気に増す。私がそんな経験をした数少ない著者が別宮氏だ。

中国、この困った隣人

中国、この困った隣人

かつて2年ほど中国で暮らしたことがある。本書の中にはビックリするようなこともたくさん書いてあるが、自分が体験したことと全く同じことが多く書かれていた。しかもそのことは他の本では触れられなかったことばかりだ。「あ、そういうわけだったのか」と長年の疑問が次々と解けていった。本書は本当のことを書いていると感じた。

世話になった老人がいたが、共産党の序列もまあまま上で良い単位の宿舎に住んでいた。しかしインテリで日本も良く知っているので、自宅の風呂が汚い(構造上)のを恥ずかしがっていた。その後、党と関係のない庶民の自宅に行き、スラムのような有様を見て、初めて宿舎の差にびっくりしたのを憶えている。

大学の講義に出たことがある。歴史学だったが、講義とは言えなかった。授業だ。使う教科書も中学校のレベルだった。中国では大卒の水準が低いという。本書が指摘している通りだった。

中国の農村も印象深い。山奥でも多くが禿げ山になっていたが、その理由は本書を読むまで考えたことがなかった。中共幹部が同行していたので問題なかったが、農民が道路を勝手に塞ぎ、通行料を徴収していたのにも驚いた。その理由も本書で分かった。

人民元が汚いのも、庶民が銀行にお金を預けない理由も本書で分かった。日本の現地法人が単純労働の工場ばかりで、主任として工場に駐在していた友人の絶望感も本書を読んで思い出した。

戦前・戦後の歴史と政治についても本書は詳しい。やっぱり大躍進の時は共産党の幹部であっても飢餓に苦しめられたんだと、あの人を思いだした。戦前に国民党や日本軍に協力した人が今でも怯えているのを当時は訝しげに感じたが、本書を読んで、彼らの苦しみを一片も理解していなかったと気づき、悔やんだ。

本書は中国に居たことがあって中国好きな人にぜひ読んでもらいたい。若干、著者の経験というか情報が10年前くらいかな?と感じることはあるが、おおむね共感を得られると思う。

初出:http://shanxi.nekoyamada.com/archives/000103.html

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