著者の山本秀也氏は産経新聞社の社員として、社の名誉をかけて北京に送り込んだ中華圏専門の記者。北京大学の学士四年コースを卒業しており、高い言語能力と広い人脈が、他にはない取材力の源泉になっている。気になったのは、あのプロパガンダ教育のなかでバランス感覚を持ち得たこと。経歴を見て納得した。天安門事件前に就学している。最も自由な気風が許された時期に学んでいるのだ。
本書には、農村、エイズ、環境、司法とキーワードが付されているが、むしろ「権威政治と秘密主義」「汚職」「貧富の差」「モラルなき農業」「蔓延するエイズ」「民主なき法治」等々の方が硬派な内容を良く伝えるのではないか。本書一冊で現代中国を分かったような気になるのは危ないが、基礎知識としては十分だ。中国入門本としてお勧めできる。
所々で尖閣諸島の問題など、日中間での政治問題について"産経色"のフレーズが入っているが、その多くが付言という形で挿入されており、著者の論というよりは、編集サイドで挿入した気もする。ともあれ、第二・第三の山本を送り出すことができれば、「中国報道は産経」といった評価も不動のものになるだろう。
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