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戦後の中共治下で起きた残忍な行いの起点が、孫文が共産党と手を結んだのを機にして国民党支配地から始まったのはショックだが納得がいくことだ。ソ連式の暴力思想を取り入れた共産党は、以降一環して支配地域で残忍な血の粛清を行っていく。その恩恵を最も享受したのが「紅色皇帝」となった毛沢東だ。自らの権力欲のために、人々へのテロと搾取だけでなく、数万の友軍でさえ平気で抹殺するその破滅性癖は、古今東西のあらゆる暴君と比しても劣らない。著者は毛沢東には7000万人の死の責任があるとする。
著者自身は「有能無情な日本軍」という表現に見られるようにけして日本に好意的ではなく、一部で首肯しかねる記述も見られるが、やはり戦前から国共内戦終結までを扱った上巻には引き込まれる。日本との戦争で中共が軍事面でなんら貢献がなかったことはすでに周知の事実だが、上海戦が蒋介石による開戦決意でなく、張治中将軍らソ連スパイによる手引きで引き起こされたというエピソードは、これからの日中戦争の研究に深刻な影響を与えるはずだ。また、ロシアGRUの公文書にあった張作霖爆殺がソ連の謀略によるという新事実も、現実には共産特有の誇張・法螺の類(現場が自分の手柄にしたいがため)だろうが、私たち日本人には検証意欲をそそられるエピソードだ。
長征の虚像、晥南事変の真相、恐怖政治と阿片栽培という根拠地の実態、スパイによる裏切りと私情で破れた蒋介石の姿。中共の公式発表に依拠してきたこれまでの通説が、本書の前に音をたてて崩れていくことを読者は感じるはずだ。


